松尾芭蕉「野ざらし紀行」のすみれ草
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『山路来て 何やらゆかし すみれ草』 松尾芭蕉
(やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ)
松尾芭蕉が「野ざらし紀行」(甲子吟行)の中で詠んだ俳句で、「野ざらし紀行」のなかで最も人々に愛された俳句の一つが、このすみれ草の句だそうです。
「野ざらし紀行」は他に「甲子吟行」や「芭蕉翁道乃紀」などとも呼ばれ、貞亨元年(1684)8月に江戸の深川を出発してから東海道、中山道、甲州街道を経て貞亨2年(1685)4月に再び江戸に戻るまでの約二千キロメートルにも及ぶ旅の中で詠まれた作品集です。すみれ草の句は、その野ざらし紀行の道中、京都から大津へ向かう逢坂関がある逢坂山越えの道での出来事ということになります。
しかし、その『山路来て 何やらゆかし すみれ草』の句の初案は『何とはなしに 何やら床し 菫草(スミレグサ)』という発句なんだそうです。野ざらし紀行の旅程の終盤に、熱田の白鳥山法持寺に参詣したときに、芭蕉、桐葉、叩端を連衆とする三吟歌仙が開かれ、そのときに巻かれた歌仙には『何とはなしに 何やら床し 菫草』の句形を見ることができるそうです。
松尾芭蕉といえば「奥の細道」が有名ですが、「野ざらし紀行」などそのほかの作品集にも味わい深い句が多くあります。
松尾芭蕉が目にしたスミレは春の草
『山路来て 何やらゆかし すみれ草』は松尾芭蕉の有名な俳句ですが、芭蕉の足を止めたその可憐なスミレ草は一体どんなスミレだったのでしょうか。
このスミレ草の句が読まれたのと同じ時季に、ある植物写真家が京都から大津までの芭蕉が歩いたであろう山路をたどったところ、そのスミレはタチツボスミレであったというエピソードがあります。
そのタチツボスミレ(立坪菫)ですが、実は日本で一番多く見られるスミレでどこにでも見られます。草丈は5〜20センチメートル程で、花期は2〜5月頃の春の草です。どんな花か気になる方は、春に自宅の周辺を探してみてください。すぐに見つかると思います。それが松尾芭蕉が見たスミレだと思うと、なんだか不思議な気持ちになり、芭蕉を身近に感じることができます。
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